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認知症によくある症状~昔の世界に戻っていく~

2015/6/21 

認知症に罹った家族を世話していて辛いことの一つが、家族のことが分からなくなるということです。
子どもなのに「お姉さん」 と言われたり、「どなた様ですか?」 と言われて言葉に詰まったという人は、少なくありません。
認知症の中期頃から現れる症状とされています。

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
このような言動に接したら、どのように振る舞えば良いのでしょうか?

【家族誤認はいずれ起こる】

認知症を発症してからの余命は、個人差もありますが、おおよそ10~15年と言われています。
その間に認知症は徐々に進行していきます。
軽度から重度まで、次の段階に移行するまでの期間は、個人差がかなり大きいものの、3~5年くらいで移行していくようです。

中程度まで認知症が進行した時に見られる症状の一つに、家族誤認があります。
自分の夫が見ず知らずの他人に感じられて

「どなたですか?」

と言ったり、自分の子どもを自分の兄弟姉妹の誰かと思ったりします。

子どもを自分の兄弟姉妹の誰かと思う場合、自分よりも歳上の兄姉と歳下の弟妹がいる時には、自分の弟妹と誤認する状態から始まることが多いようです。
その状態がしばらく続いてから兄姉と感じることが多いとされています。

認知症が進行するにつれて、できないことがどんどん増えていきます。
頼りない思い、誰かにすがりたい思いが次第に募り、自分を保護的に扱ってくれる存在を求める結果として、症状が進むにつれて頼りになる子どもを自分の兄姉と感じるようです。

【記憶の逆行性】

家族誤認には、認知症の中核症状の一つである記憶の逆行性が深く関わっています。

記憶の逆行性とは、その人の中に蓄積された記憶が、現在から過去にさかのぼって失われていく現象を言います。

認知症に罹ると、まず、数日以内のことに関する記憶が曖昧になります。
次に数分前のことについての記憶があやふやになります。
電話を受けて家族に取り次ごうとして誰からの電話だったかを思い出せないという症状は、数分前の記憶に障害が起こっている証です。

長期記憶は、認知症に罹った初期の段階では、まだ保たれています。
しかし、認知症の中期になると、長期記憶も次第に曖昧になっていきます。
ランダムに失われるのではなく、新しい記憶から失われるとされています。自分が子どもの頃の記憶はかなり後まで残されています。

失われていく記憶。

その人にとっての「最近」は、残っている記憶の中の最も新しい時点のことです。

そのため、配偶者は、若い男女であるはずであり、自分の前にいる年配の男女と配偶者は結びつきません。

「どなたですか?」

となるわけです。
夫といても、

「見ず知らずの男性と一緒にいるわけにはいきませんから、お帰りください。」

と言って夫を困らせる老婦人もいます。
困った父親から電話を受けた娘が父親を伴って自宅に行き、ようやく受け入れたというケースもあります。

【家族は別の人を演じることも大切】

自分のことを分かってもらえないと、家族はがっくりときます。一生懸命に介護をしていればいるほど、家族誤認が起こった時の衝撃は強いでしょう。

最初のうちは、どの家族も本人の記憶を呼び戻そうと努力します。

「せめて自分のことは分かっていて欲しい!」

と願います。しかし、本人の記憶が戻ることはありません。

家族が一生懸命に記憶を呼び戻そうとすればするほど、本人は混乱します。

「自分が知っている人」

ではないからです。

失われていく記憶の中で、「自分が知っている」 配偶者は若い男女であり、
「自分が知っている」 子どもは幼い子どもなのです。
そのイメージと全く異なる人が目の前で「夫だ」 「子どもだ」 と言っても、本人には納得ができません。

家族は、本人が思っている誰かを演じることが大切です。
演じながらつながること。
過去にさかのぼって、親の兄弟姉妹の誰かを演じても良いでしょう。
昔聞いた話をもとに会話することで、本人の世界は安定します。
そのようなつながりが、認知症の人の心を 「現実」 につなぎとめます。