日本の伝統的な床材・・・畳(たたみ)。その歴史は古く、現存する最古のものは奈良時代まで遡る。高度経済成長以降、日本ではフローリングに代表される西洋式建築が主流となってきたが、ここに来て「和ブーム」と相まって、改めて「畳」が注目を集めている。今回は神奈川県大和市で畳店「い草工房おかもと」を経営する同社代表・岡本忠氏にお話を伺うことができた。
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まずは簡単に畳の歴史についてご紹介しよう。
奈良県・東大寺の正倉院には、聖武天皇が使用した「御床畳」(ごしょうのたたみ)が保管されている。これは木製の台の上に置かれ寝台として使われたもので、現存する最古の畳と言われている。平安時代になると、貴族の邸宅に見られる「寝殿造」の様式に取り入れられ、座具や寝具として常設される“置き畳”として使われるようになった。以降、鎌倉時代から室町時代にかけて、武家の代表的な建築様式である「書院造」に取り入れられ、部屋全体を覆う床材としての性質が強くなり、桃山時代から江戸時代にかけては、茶道の発達によって茶室の工夫や手法を取り入れ発展した。庶民の家に畳が普及し始めたのは江戸中期以降と言われている。明治以降、現代に至っては、洋風の建築が主流となり、マンションなどにおいては、畳の部屋は1室という間取りが主流となっている。
そんな減少傾向にある畳業界において、さまざまな新商品を開発しているのが、今回ご紹介する「い草工房おかもと」だ。早速、工房の奥から企画中の商品を持ってきてくれた。
岡本忠氏(以下:岡本氏)
「これはマウスパッド、そしてこっちはコースター。どれも畳を一枚つくる過程で余った部分を利用して作ったやつです。あと、畳で作った掛け時計もありますよ。」
これらの可愛らしい小物は、いずれも職人さんの「手」でつくられたものばかり。マウスパッド程度のもので、だいたい1時間程かかるという。小物ながらも、自然味溢れる“イ草”の心地よい香りが“癒し”を与えてくれる。
そう言って、工房の奥から持ってきてくれたのはカラフルな畳たち。濃紺・焦げ茶・小豆色、黄金色など、和のテイスト溢れる色で染め上げられたものばかりだ。畳を作る作業は、基本的に今も昔と変わらず手作業。イ草を一本ずつ萎えあげていく。
岡本氏:
「一畳の畳で大体5000本ぐらいのイ草を使用します。高級なものになると6000本以上使いますね。糸も太い麻糸を使用します。このように一口に畳といっても、品質や値段など色々なグレードがあるのです。」
このように、職人が丹精込めて作り上げる畳。しかしながら近年、マンションなどに代表される西洋式建築が主流となり、畳の部屋というものが少なくなりつつある。また、若い世代の畳職人が不足しているという問題もある。改めて「畳の魅力」とは何か・・・そんな問いに、岡本氏はこう答える。
岡本氏:
「まずは香りが良い。日本人の潜在意識に触れるというか・・・。“日本人で良かった”と感じさせてくれる“癒し”があると思います。そして目に優しい。畳の光の反射率は、人の肌と同じぐらいなのです。だから一つの部屋に敷き詰められていても目が疲れない。さらに空気の清浄効果。イ草の表面は固く、中はスポンジのように柔らかい。たとえるならエアコンのフィルター。炭のように空気を綺麗にしてくれる効果があります。同様に、イ草の構造により音を吸収してくれる防音効果もあります。」
かつての日本には、当たり前のようにあったもの・・・
それが時代の変化と共に、文化財として扱われるというケースは少なくない。畳もまた、需要の減少に歯止めが掛からなければ、いつの日か「文化財」として扱われてしまうのだろうか。「和」というものを、単なるブームとして盛り上げるのではなく、日本人の永久不滅の文化として、これからも守っていきたい。工房から溢れるイ草の香りは、そんな感情を抱かせてくれた。
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