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菅義偉官房長官が首相に就任。アベノミクスと不動産を振り返ります

2020/9/28  200万円からの不動産投資をする大家さん さん

2020年9月16日に7年8か月続いた安倍晋三政権から菅義偉政権へと政権が移譲されました。今まで首班指名を受け続けてきた安倍前首相が座ったまま菅新首相に拍手を送るシーンは政権が移譲されたことを私に再認識させるには十分な光景でした。

今回は、不動産投資を行っている私が主に見ることが多い九州地方の不動産の情報などを題材にアベノミクスが不動産にどう影響したかを振り返ってみたいと思います。

福岡市中央区の物件が120万円で変えた時代

 話を少し戻しましょう。まだ民主党が政権にあった時代です。2010年頃ですから菅直人政権の頃です。リーマンショックが起きてまだ2年。政権も自民党の麻生太郎政権、民主党の鳩山由紀夫政権、菅政権と1年ごとに首相が変わる時代でした。

 この頃、九州一の商圏でもある福岡市中央区の天神近くの単身者向け物件がなんと120万円で買える時代がありました。今は3倍以上になっていますのでこの時買われた方の転売益は結構なものだと思います。

 菅政権の跡を継いだ野田政権が「近いうちに解散する」といい、それが「いつか?」とかいうもはやチャンバラ劇のようなことがあるうちに自民党の谷垣総裁が引きずり降ろされました。結果、石破茂さんと石原伸晃さんの争いになると思われた自民党総裁選挙は安倍元首相が逆転で勝利し、安倍総裁が誕生しました。
 支持率は自民党が民主党を上回るようになり、安倍総裁就任3か月後の2012年12月26日、大胆な金融緩和を訴え総選挙で勝利した安倍晋三政権が誕生しました。安倍少将は大胆な金融緩和を軸とする「アベノミクス」を提唱しました。

バブルは起きないと言われたが・・・

 安倍首相はいきなり日銀総裁の首を据え替えました。ゼロ金利政策、量的緩和政策に対しては、効果が「限定的」であるとしてきわめて批判的であった白川総裁を任期終了前に辞任させ、後任に黒田東彦氏が就任し、デフレ脱却をめざす政策がとられるようになります。2013年4月、黒田は総裁の就任後初めてとなる金融政策決定会合で、2%の物価目標を2年程度で実現するために日銀が供給するマネタリーベースを2年間で2倍にするなど大胆な金融緩和に踏み切ります。俗にいう黒田バズーカーの第1弾です。
 でもこの頃は多くの人は「インフレ誘導は無理ではないか」と懐疑的でした。

 転機は2回ありました。2013年9月です。東京オリンピック招致が決まり、アベノミクスは不動産市況を劇的に変化するようになります。まずここで東京23区内の物件価格が上昇し始めます。
 と同時にお手ごろな都内の物件は販売後、数分で売れる事態になります。当時は湾岸エリアでも400万円台で買える中古ワンルームがありましたが今はもう無理でしょう。

 この頃、私が最も得意とする九州エリアではまだまだ100万円台でもバランスの良い物件がありました。そこに黒田バズーカーが飛びました。
 2014年4月、5%から8%へ消費税率が引き上げられたことを契機に、国内の景況感は悪化しました。そこで同年10月、日銀は量的・質的金融緩和の拡大(追加緩和)を決定し、より多くのお金を市中に供給し始めました。このタイミングでの追加緩和が予想外だったこともあり、金融市場は日銀の決定を歓迎し、株価が上昇するなど景況感は上向きました。これが俗にいう黒田バズーカの第2弾です。

 私自身、この第2弾の効果は大きかったと実感しています。既にオリンピック効果で東京の物件の価格は上昇しておりましたがそれが地方都市に波及するようになります。私が知る限り、名古屋、京都、福岡は顕著だと思います(大阪そうだと思いますが私があまり見ていないのでスミマセン)

 私自身は九州を中心に投資を行っているのですが、正直、2014年位までは福岡市中央区といった福岡市の中心部でもかなり良心的な物件がありました。天神辺りで200万円台とか、大濠公園周辺も利回りが10%を超える物件も多かったです。
 しかし、この黒田バーズカー第2弾頃を契機に売主さんが強気な傾向に出てきます。価格交渉の余地がなくなり、物件の価格上昇が始まります。

私自身も

「お前の代理人の司法書士が気に入らないから売るのをヤメた」

 などとという珍妙な理由(?)でご破算になった例もありました。
 福岡市の物件価格上昇は近隣に波及します。まずは北九州市の物件価格が上昇し始め、そして久留米市も上昇します。この様に徐々にしかし確実に近隣に物件上昇の波及が広がり始めた時期でした。
 そんなことにもめげずに名古屋市で築30年以内の物件を200万円キッカリで物件を取得できた時期でもありました。

もう良い物件は取得できないかもと思ったのは2016年3月

 2016年1月末に、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入しました。これが黒田バズーカーの第3弾です。マイナス金利って訳わかんないですよね。だって現金預けたら金利を取られる?ってナニ?と思います。

 そんな私の疑問をヨソにマイナス金利の導入は不動産融資をより活発にさせます。2016年3月頃からはそもそも巷に物件が出てこない状況になりつつあったので、バブル状態に近いと感じていました。私自身はいわゆるサブリース物件ではない物件で、200万円以下で物件を取得することを一つの指標としていますが2016年12月に福岡市で175万円の物件を購入できたのが福岡市で最後の取引だったと思います(これは既に売約済)。

 結局、上記天神エリアで100万円台で変えた物件は300万円台後半に、200万円台半ばで買えた博多駅周辺の物件は現在、500万円前後と、まさに2倍から3倍の値段へと変貌しました。裏を返すと投資家にとってアベノミクスは、ある意味で残念な出来事でもあります。値下げが起きると「買い」のタイミングが来ますが、結局、右肩上がりが続き、いわゆる転売による利益しか得られない状態が続いています。

 こうした状況下では、以前のような金額の取引はちょっと難しいだろうと思いつつ、今日に至っています。結局、安倍政権下で株価と不動産価格は上がり続け、高値で安定した。これは、歴史的事実として残ることになりました。

 菅首相は早速、日銀の黒田総裁と会談し、現在の金融政策を維持する方針を確認していますので、黒田総裁の人気である2022年まではこうした状況が続くのかもしれません。裏を返せば、2022年の日銀総裁人事が不動産価格にどの様な影響を及ぼすのかを注視しているところです。

(執筆者)200万円からの不動産投資をする大家さん

名古屋や福岡といった地方都市をメインに投資総額を200万円前後に収める不動産投資法を行う。定年生活内でも「200万円から始める画期的不動産投資法」や「200万円から始める画期的不動産投資法実践編~お宝不動産物件との出遭い方」といった連載コラムを過去に掲載した。リスクを最小限にリターンは最大限にする方法論に定評がある。