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後輩から人事異動の話を聞いて・・・

2012/4/12  光男 さん

シニア|転勤「明日、上京することになりました。東京で一泊するので夕方、どこかで逢えませんか」。携帯電話に連絡してきたのはかつて部下である。彼は40代半ば。札幌支社に管理職として勤務している。
「仕事?」「ええ、まあ、一応は・・・」。珍しく歯切れが悪い。「一応ってなんだよ」。彼の精悍な顔を思い浮かべながら問い返すと一呼吸、間があいて「電話じゃなんなので、会ったときに話します」といって切れた。待ち合わせの駅改札口にやってきた彼は少し太っていて、年齢相応の顔になっている。近くの居酒屋の暖簾をくぐりテーブル席で向かい合いになると、やや声を落として上京した理由を口にした。「じつは、東京にきたのは人事異動のことなんです」。

別に驚きもしなかった。彼は北海道の道東出身ということもあって、10年ほど前に自ら札幌支社勤務を申し出た。東京本社を離れたくない社員が多い中、彼のような存在は会社にとっても好都合だったらしい。すぐに辞令がでた。両親が道内に暮らしていて、ゆくゆくは面倒をみようと考えたうえでの彼なりの決断だったのである。
「で、赴任地はどこなの?」「名古屋です」。彼には3人の息子がいる。長男は今春から道内の大学生、次男は高校生、三男は小学校高学年。経済的にも教育の面でも負担の強いられる微妙なときである。「単身赴任になりますね。家族と一緒に住むのがベストなんですけど、そうもいきません。会社側はこっちの家庭の事情などまったく範疇にありませんからね」。彼が危惧しているのはこの先、北海道に戻れないのではないかということだ。「札幌に転勤するとき定年まで異動はないということが会社との約束だったんですけどね」。

それを反古にされたという苛立ち。ビールから日本酒になり、手酌で飲み始めた彼はどこか投げやりで会社に対する不信感を隠そうともしなかった。「転勤が嫌なら会社を辞めるしかありませんからね。なんもかんも会社の都合ですよ」。
黙って聞いていたが、そのうちに、違和感が芽生えてきた。勤め人である以上、転勤はある程度、止むを得ない。それをどう受け取るかだろう。当初、思い描いていたイメージより赴任先はよかったという声も多い。わが身を振り返ってみても土地勘のないところで仕事をしたのはいい経験だった。現役を引退したのに先輩面して分別臭い言いまわしをしたくなかったので「そう悲観しないで、要は考え方だよ。転勤、単身赴任で得ることも多いと思うけどなあ」とさりげなくいっておいた。

彼と別れ、帰宅電車に揺られているとき、それまで穏やかだった感情が急にざらついて、とげとげしいものになってきた。そして、胸の内でこう呟いていたのである。「転勤が嫌だ、辛いなんていっているのは贅沢、甘えだよ」。
酔いのせいもあったかも知れない。相談相手として声が掛かっただけでも感謝しなければいけないのに、恵まれた仕事に就いていない自分がどこかで卑下し、彼に嫉妬していたのである。人間の業というはやっかいなもので、シニア世代になったからといっても、なかなか達観できないでいる。

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