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映画「春の雪」を見た

2012/4/28  仮面の告白 さん

三島由紀夫三島由紀夫の豊饒の海その1「春の雪」を読みました。
その勢いで映画も見ました。見てしまったといったほうがいいかもしれません。

春の雪の映画はずっと見ないままでした。妻夫木聡、竹内結子という2人の主役がいかにも力不足で、映画が成り立っていないだろうという先入観があったからです。あの三島由紀夫の絢爛豪華な文章を映像にすることも無理なのではないかと思っていました。だいたい映画というのは原作がよければいいほど、映画のできは無惨なものになるのがパターンですから。

実際、この映画はただ1点を除いてきわめていいできでした。しかしその1点の欠点が、すべてを台無しにしてしまい、傑作にならなかった映画です。

どこかといえば、最後、聡子が尼寺で髪を下ろすシーン。竹内結子の最大の見せ場です。現世のすべてを断ち切って仏の世界に入る決意のシーンで、哀しさ、つらさ、寂しさ、悲壮感と同時に、気高さ、りりしさも表現しなければならなかった、それによって映画全体が傑作になる最重要なシーン、それを台本通りの平板な演技で映画全体を台無しにしてくれました。覚悟を決めた女の強さがまったく出ていませんでした。ーー文句があるならかかってきなさい。

ま、そこは想定の範囲内ではありましたし、映画としては、きわめて誠実だというところを評価したい。でも何度も言いますが、決して傑作ではありません。

原作に非常に忠実に描かれているのがいいですね。よけいな解釈を入れず、ストレートに原作の世界を表現したまじめさに好感が持てます。原作を読んだものとしては、この映画は原作を超えないまでも映画独自として非常にいい。また、映画表現ならではの画面もよかったですね。

たとえば、最後の別れの場面で竹内結子の聡子が百人一首の読み札を妻夫木の清顕に渡す。これは原作にないところです。2つに別れていた札が一つになるところで今生の別れ、永久に別れるという聡子の思いが込められているのがわかります。

同じように尼寺に入った聡子を連れ戻そうと清顕が命をかけて寺前に出向く。そこに降ってくる雪。それこそ春の雪。この美しさは想像を絶します。

そして原作でも泣けた、聡子を連れ戻しに来た本田をすげなく追い返す門跡。その会話を、ふすまの後ろで聞いていた聡子が、思わずもらすすすり泣き。もうたまりません。もっと密やかにすすり泣いてほしかったけど、ぜいたくはいうまい。

そして映画ならではというのは、何より前編を通じる、重厚感、本物感。大正初期の華族の生活風景など、いかに絢爛豪華な三島の筆を持ってしても実感されるものではありません。それを現実のリアルな絵として目の前に提示されることの迫力は小説の比ではありません。松枝侯爵の豪邸や帰属のパーティの様子など、文章ではイメージしづらいのが画面ではっきりわかる。当時の家々の本物感。さらに序盤で着ていた聡子の豪奢な着物の数々、あれ、相当名のある本物の着物ではないでしょうか。冒頭のカルタ遊びの、外の風景のCGには笑っちゃいましたけど。まあ、あれはご愛敬。

是非とも原作を読んでから映画を見ていただきたい。味わいが二倍になります。その逆ではだめです。何度も繰り返しますが、映画は傑作ではないただの凡作。凡作を見てから傑作を読んじゃ半減します。

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