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認知症の終末期ケア 胃瘻をつくりますか?
2016/1/26 -
認知症の症状が進行していくと、口から食事が摂れなくなる状態に至ります。
嚥下機能が衰えるということもあります。また、食べること自体を忘れてしまうという場合もあります。
そのような段階に至ると、本人は当然自分の意思を表示できません。嚥下障害がひどくなって誤嚥性肺炎で入院した時、家族に病院側が提案するのが胃瘻です。
【家族には心の準備ができていない】
胃瘻は、口から食事ができなくなった人に経管で栄養を補給する手段です。
今では、非常に短時間で手術が済みます。
15~20分もあれば、胃瘻はつくれます。
患者の体への負担も少ない方法で手術は行えます。そのような現状を踏まえ、食事が口から摂れなくなった高齢の認知症患者に対しては、医師から胃瘻をつくる方法があることが説明されます。
医師によっては、胃瘻をつくることを推奨するような形で話が進められることもあるようです。
胃瘻をつくらなければ、患者は遠からぬうちに栄養不足で死に至ることが明白だからです。病院側からの説明は、誤嚥性肺炎の急性期を患者が乗り越えた時点でなされるのが普通です。
急性期は予断を許さない状況だからです。今後の成り行きを考える必要が生じる時点で、胃瘻という選択肢が浮上します。
ただし、家族の多くにとっては、心の準備ができていない段階での話です。仮に胃瘻の問題を知っていたとしても、自分の家族にそのような事態が生じるとはなかなか思えません。
考えたくないというのが正確なところかもしれません。「顔色も良くなってきたから、また元の生活に戻れるはず!」
と希望を抱いた矢先、元には戻れない可能性が非常に高いと宣告されるに等しい話だからです。
【胃瘻をつくる病院との関わりは「線」であることが望ましい】
介護施設と提携している病院の医師から説明を受けた場合なら、胃瘻をつくった後も継続して定期的に診察を受けられます。
胃瘻をつくった患者がその後どのような経過を辿るのかを医師にも知ってもらっているということで、患者の家族にも納得感が生まれることでしょう。
胃瘻をつくるかつくらないかという問題は、患者の延命に直結するきわめて重要な決断です。
胃瘻をつくっても、その後1週間足らずで他界するケースもあります。
胃瘻をつくった時点ですでに体力がひどく低下しており、悪性の床擦れが生じることもあります。ただし、日本では、胃瘻をつくった患者の約半数は2年以上生存しているとの報告もあります。
胃瘻をつくるということは、患者の生きる可能性を引き出す手段であることは確かです。問題なのは、どのように生きているかということでしょう。
胃瘻が必要になった認知症患者は、自分で意思を表示できないことが大半です。
表情もきわめて乏しいことが多いでしょう。そのような状態で寝たきりになっている患者を見て、家族は自らに問い続けます。
「これで本当に良かったのだろうか?」と。
胃瘻をつくった家族は、誰しも自らに問い続けます。
その時、胃瘻に携わった医師が関わりを持ち続けてくれれば、家族は納得しやすいのではないでしょうか。胃瘻を拒否する声が現在大きいことの一因は、胃瘻をつくる病院と患者の家族との関わりが「点」であることにあるのかもしれません。
長期的につながりを持ち続ける「線」という形で、胃瘻をつくる病院と患者の家族が向き合うことができれば、家族も納得感が得られやすいのかもしれません。
【延命拒否の理由に納得していますか?】
胃瘻への賛否は、認知症の人を取り巻く現場でははっきりと分かれています。
むしろ、胃瘻を拒否する意見が今は多いかもしれません。
「自分の口から食事が摂れなくなったら、それが寿命」
「チューブにつながれてまで生きていたくない」
「家族に迷惑を掛けたくない」といった意見が多いようです。
しかし、以前そのような言葉を聞かされていても、胃瘻をつくらないという決断は、家族にとってはあまりに重いものです。
家族の意思を尊重して胃瘻をつくらない人もいます。
胃瘻をつくらなければ死が見えているということで胃瘻をつくることにする家族も少なくありません。医師に勧められたからという理由だけでしょうか。
同意した心の奥には「やはり生きていてほしい…」
と一縷の望みを託す思いがありはしないでしょうか。
家族だからこそ最後まで心は揺れ動きます。
家族の生死に直結する決断を迫られた時、改めて認知症という病気の性質を思い知らされます。
最終的に家族の意思を代弁する必要があるのです。
その重みを担える介護生活であるよう、社会も支えていくことが望まれます。
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