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成年後見制度の落し穴

2017/8/25 

こんにちは。相続税専門の税理士の橘です。
認知症や精神障害などにより、判断能力が低下してしまうと、相続税対策は一切できなくなってしまうことをご存知でしょうか?

税金の対策ができないだけではなく、ご自分で介護施設への入居手続きや、費用を用意するために不動産を売却したりすることが難しくなってしまいます。

相続税対策を考えられる人のほとんどは、ピンピンコロリを前提として対策を考えられますが、厚生労働省が算出したデータによれば、65歳以上の4人に1人は認知症であるかMCI(軽度な認知症のこと)であると発表しています。

相続税の対策は、その人がお元気なうちにしかできません。今回は認知症と相続対策について解説致します。

【判断能力が低下した人を守るための成年後見制度があります】

成年後見制度とは、認知症や事故、精神障害などにより判断能力が低下してしまった人を守るために、親族や弁護士、司法書士などが、その本人に代わって財産管理や契約行為を行うことができる制度です。

【親族が後見人になれるとは限らない】

判断能力が低下してしまったあとに後見制度を利用する場合には、家庭裁判所が後見人を選ぶ、法定後見制度というものを利用しなければなりません。ここで多くの方が誤解しているのは、家庭裁判所が後見人を選ぶ場合、親族が選ばれる可能性は低いのです。では、誰が後見人に選ばれるかと言うと、まったく血のつながりのない、弁護士や司法書士といった法律の専門家たちが選ばれるのです。

平成27年時点において、後見制度利用者の全体のうち、約7割は、血のつながりのない第三者が後見人となっています。実務上は、その本人の財産額が大きくなるにつれ、親族が選ばれる可能性が下がります。後見制度を数多く経験されている弁護士に話を聞いたところ、明確な基準はないそうですが、財産が3000万を超えてくるようなケースには、弁護士や司法書士が選ばれる確率が非常に高いとのことでした。

そして、なにより重い負担になるのは後見人への報酬です。後見人への報酬の相場は、月額3万円~6万円です。さらに、財産規模の大きい人であれば、後見人が不正を働いていないかをチェックする、後見監督人という別の役職者をつけなければいけないこととされており、この後見監督人にも月額1万~2万円程度の報酬を支払わなければいけません。

また、これも多くの方が誤解をしているのですが、一度、後見制度を開始すると、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで、後見制度を途中でやめることはできません。

判断能力は低下しても身体は元気という方もたくさんおられます。後見制度を利用する場合には、後見人への報酬を負担し続けることを覚悟したうえで利用を検討しなければいけない点に注意が必要です。

【後見制度を利用しても、相続税対策は一切できません】

後見人に頼めば、生前贈与や生命保険の加入、賃貸不動産の購入ができると思いますでしょうか?答えは、残念ながらNOです!後見人の役目と言うのは、その人の財産を守ることです。生前贈与は、その人の財産を減らす行為なので、後見人の役目とは完全に逆行するのです。そういった行為は、家庭裁判所からNOを突き付けられます。また賃貸不動産の購入も同様です。空室リスクや震災のリスクを考えると、必要不可欠では賃貸不動産を購入することもできないでしょう。

このように、後見人に頼めば相続税対策ができると思っている人も多いのですが、実は、一切できないというのが実情なのです。

【まとめ】

いかがでしたでしょうか?相続税の対策と言うのは、その人が元気なうちにしかできないのです。まだまだ元気だからいいや、と思っていたら、ある日突然心の病に侵されることもあります。是非、相続対策はお早めに検討してください。

■■■ 著者プロフィール ■■■

表参道相続専門税理士事務所
代表税理士橘 慶太

大学卒業後、23歳で税理士試験に合格。(この年25歳以下で税理士試験に合格したのは全国で70名) 大学在学中から、相続税案件実績日本一の税理士事務所、税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社。丸6年間、相続税専門の税理士として業務に従事。これまで手掛けた相続税申告は、一部上場企業の創業家や芸能人を含め通算150件以上。また、日本全国の銀行や証券会社で相続税セミナーや研修の講師を年間133回行う。
平成29年1月に、完全相続税専門の税理士事務所、表参道相続専門税理士事務所を設立する。

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