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消費増税は鬼門? 歴代の首相のクビが飛んだ消費増税の歴史

2019/9/30 

2019年10月1日より、消費税が10%の大台に上がります。消費税が導入されたのは、1989年の4月。以降、30年かけて消費税が10%まで上がったのですが、この消費税をめぐる議論その都度、時の首相が退陣に追い込まれる事態が相次ぐ「鬼門」と言われていました。
 今回は、その歴史を振り返ってみます。

消費税の議論のスタートは、大平内閣

 消費税導入の議論がスタートしたのは大平内閣のときでした。1970年代後半、高度経済成長の終了後、税財源を景気に税収が左右されやすい所得税などの直接税ではなく、大型間接税に頼るべきだとの意識が背景にありました。
 が、大平内閣は、自民党内の40日抗争や、その後のハプニング解散によって行われた衆議院総選挙中に死去。この議論は封印されることになります。

消費税導入は竹下内閣で

 消費税を導入したのは、竹下登内閣。1988年に消費税導入を含む税制改革関連法案を強行採決。1989年4月から、日本初の消費税として3%の税金が賦課されることが決まりました。が、竹下内閣は、リクルート事件の相まって支持率が低下。最後は、支持率が消費税並みと揶揄される中、1989年6月3日に総辞職することになります。
 が、消費税の余波は終わりません。竹下内閣の跡を継いだのは、竹下首相に後継指名された宇野宗佑外務大臣。宇野内閣は1989年7月の参議院選挙に突入しますが、「消費税反対」を掲げる土井たか子委員長率いる日本社会党が躍進。マドンナブームと称して、多くの女性議員も誕生する45議席と獲得。
 一方の、自民党は結党以来最低の「36議席」に終わり、参議院での過半数割れとなるいわゆる、ねじれ国会に・・・。ここから長らく自民党は参議院での過半数獲得が出来ない状態が続くことになります。

https://www.youtube.com/watch?v=-jOpNUZwmNQ
(上記動画で当時の消費増税に反対する土井たか子委員長のテレビCMを見ることが出来ます)

国民福祉税構想を発表した細川首相

 1989年の参議院選挙の大敗から4年後、1993年に自民党はついに野党転落。非自民による細川連立政権が誕生します。細川内閣は「政治改革」を掲げ、高い支持率で推移。この高い支持を背景に長年の懸案事項に取り組む意向で、その一つが赤字国債に頼らない財政運営でした。
 そのため、当初から税制改革に意欲的でしたが、これに与党第1党の社会党が猛反発。そのため、細川内閣は消費税増税ではなく、使用用途を「福祉」に限定する「国民福祉税」構想を発表。税率を7%とし、消費税は廃止することを1994年2月3日の深夜に発表。
 これを「事実上の消費増税」と社会党や新党さきがけが猛反発。結果、この国民福祉税構想は撤回に追い込まれ、4月には、細川内閣は、退陣に追い込まれます。その2か月後には、村山富市社会党委員長を首班とする自民・社会・さきがけの3党による自社さ政権が誕生し、非自民連立政権は10か月で終了しました。

税率は3%から5%へ
 
 消費税を3%から5%に引き上げる決定をしたのが皮肉にも村山富市内閣でした。当然、5年前の土井委員長時代との整合性が問われ、社会党は内部分裂状態に。結果、1996年には、社会党は「社会民主党」と党名変更するも、党勢は衰退し、現在は衆参合わせて数名の小政党に転落しました。
 後を継いだ橋本龍太郎政権下の1997年4月に消費税は5%に。しかしバブル経済の崩壊から立ち直っていない日本経済はこの増税により、金融不安などの問題が生じ、1998年の総選挙で自民党は「44議席」と大敗。長期政権を期待された橋本内閣は退陣することになります。その後、自民党はねじれ国会を防ぐ為に公明党との連立政権をスタートされます。

消費税の議論は民主党政権下で・・・

 橋本政権の後、小渕、森内閣を経て、2001年に誕生したのが小泉純一郎内閣。ただ、小泉内閣は構造改革を掲げるも自身の内閣での増税議論は封じると言明。以後、消費増税議論は、延期されることになります。
 2009年に、政権交代で、民主党政権が誕生。当初は消費増税議論はしないとの公約でしたが、2011年に誕生した野田佳彦内閣で消費増税の議論を開始。党内の異論を押し切り、2012年には、「税と社会保障の行った改革」として野党・自民党、公明党とのいわゆる、3党合意を締結。2014年4月に税率を8%に、2015年10月には税率を10%に段階的に上げていくことを内容となりました。
 この合意に対する民主党内のアレルギーは強く、増税反対派が離党するなど、民主党は分裂。2012年12月の総選挙で民主党は57議席と惨敗。安倍総裁率いる自民党が政権に復帰します。


(写真は当時の民主党本部です)

安倍首相は増税を2度延期に・・・

 政権に復帰した自民党は3党合意の当事者です。2014年4月の増税は約束通りに実施します。ところが、実質GDP成長率が、前期比マイナス7.2%まで一気に下落。好調だった日本経済は、完全に腰折れしてしまいました。
 財務省に不信感を抱く安倍首相は、2015年10月の消費増税の延期を決断。2014年12月にそのことの信を問うとして総選挙を実施。圧勝します。

 さらに2017年4月に延期した消費増税も世界経済が「(08年の)リーマン・ショック前の状況と似ている」と独自の分析を披露。10%への引き上げを2019年10月に再延期し、今回の増税実施につながります。

多くの政治的エネルギーを使う消費増税

 本来は財政健全化のために議論がスタートした消費税論議。しかし実際にはこの様に多くの政治家の政治生命を奪う結果につながる政治的エネルギーコストの高いテーマとなっています。安倍首相自身、消費税のさらなる増税には否定的です。
 最近では、消費税の減税を訴える「れいわ新選組」なども台頭しています。消費増税は景気に悪影響をもたらし、決して税収増加につながっていない状況でもあります。「なんだ、土井さんが言っていたことのほうが正しいじゃないか・・・」と思う方がいても不思議でない今日この頃です。

(文責:定年生活事務局)



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