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1967年のプロ野球ニュース 愚直に誠実にブレーブス改革に取り組んだ西本幸雄監督がついに阪急ブレーブスを初優勝に導く

2020/1/7 

1960年に大毎オリオンズを優勝に導きながら、三原脩率いる大洋ホエールズに日本シリーズで4連敗。監督の西本幸雄は、オーナーと対立の末、チームを1年で去った。その2年後、1962年に西本幸雄は、阪急ブレーブスの二軍コーチに就任する。
 当時の阪急ブレーブスは万年灰色。当時の小林米三オーナーに「うちの低迷を救うのはこの男しかいない」と目をかけていた。阪急の創始者・小林一三の息子は、常に阪急電車で通勤し、秘書が進めても絶対に座ろうとはしなかった。そういうオーナーだったからこそ、「西本幸雄の愚直さ」こそ阪急を救うと見抜いていたのである。

 戸倉監督が退陣した1962年のオフに西本幸雄新監督の就任が発表された。

このオッサン、アホかいな・・・

 監督就任1年目、1963年、西本監督はナイター終了後、西宮球場の証明等をつけっぱなしにして選手に練習をさせた。言うなれば退社時間になったのに、残業を命じる部長である。しかもキャッチボールのやり方から教えようとする。
「このオッサン、アホかいな」
 何も、給料以上のことはしなくてもよい。選手にはそんな二流のアカが蔓延していた。

「一人の不埒な人間の悪影響はその周囲まで悪影響を及ぼす。俺は見逃せない」
そう感じた西本監督は容赦なく、ビンタを飛ばした。

 しかし、結果は6位、2位、4位、5位。その間、西鉄が優勝1回、南海が優勝を3回。どうしても西鉄・南海の2強の壁を崩せずにいた。そしてチーム内は西本不信が渦巻いた・・・。

「私は素晴らしいオーナー」になりたい・・・

 ○36人、×が7人。1966年11月16日の秋季キャンプの出来事だった。5位に終わった西本監督は自らについてこれるかどうか信任投票させた。×即ち不信任が7名。西本は辞意を決断する。いわゆる「信任投票事件」である。
 事態を報告した社長に対し、小林オーナーは西本監督を翻意させるように厳命した。その数日後、小林米三オーナーと西本監督が宝塚ホテルで面会する。
「西本君がそこまで思い詰めているとは知らなかった。済まない。私は素晴らしいオーナーになりたい。どうしたらいいのか」
と頭を下げた。

 西本監督は不覚にも落涙する。
「ここまで私を信頼してくれるのか・・・」
 西本監督が、人間を捨て、阿修羅になると覚悟した瞬間であった。

 ・厳寒の西宮道場、そいて1967年のペナントレース

 1966年の秋季キャンプはまさにキャンプというより、西宮道場でった。いつも以上に厳しい鍛錬が緻密に汗まみれに行われた。結果、森本潔、大熊忠義、住友平、岡村浩司、山口富士雄といった第1期黄金時代のメンバーが育つ。

 迎えた1967年のペナントレース。戦前は4年ぶりの優勝を目指す西鉄ライオンズの下馬評が高かった。若きエース、池永を筆頭に田中勉、与田、清、若生といった質量ともに豊富な先発投手陣に加えて、抑えには鉄腕・稲尾がいるリーグ随一の投手陣。しかし、10引き分けに代表されるように、投手が踏ん張っても打線に往時の勢いがなかった。
 
 5月までは阪急と西鉄のつばぜり合いが続いたが、6月以降は阪急の独走。10月1日、16時54分、京都の西京極球場で球団創設32年目の初優勝が決まった。ついに西鉄・南海の牙城が崩れた瞬間であった。


(画像が悪いですが、阪急初優勝を報じたニュース映画です)

 胴上げが終わった西本監督はすぐにネット裏の小林米三オーナーのもとに駆け付けた。2年後に急逝したオーナーへの追悼文でこの時の心境が述べられていた。紹介したい。
「金網越しに差しだされたオーナーの指。不自由な握手であったが、わたしの半生でこれほど胸に焼き付いた感激の瞬間はなかった。なにかを口に出して言いたい・・・しかし言葉に出せばあふれる涙はもう止まらないことは分かっていた。だまって見つめた数十秒。オーナーの目が「お目の言いたいことは全てわかっている」と話しかけているように見えた・・・。」

 何とも情景が浮かぶ心のこもった文章である。この優勝以降、大きく羽ばたいた阪急は1968年、69年と3連覇。1971年、1972年は圧倒的な強さで優勝し、「世界最強」と称されるようになる。

「愚直で誠実にやることが、長くて遠い一番の近道だ。」

 そんな西本監督の教えが詰まった阪急初優勝であった。

・1967年ペナントレース結果
1位 阪急ブレーブス  75勝55敗4分
2位 西鉄ライオンズ  66勝64敗10分
3位 東京オリオンズ  65勝65敗4分
4位 南海ホークス   64勝66敗3分
5位 東京オリオンズ  61勝69敗7分
6位 近鉄バファローズ 59勝71敗2分

(文責:定年生活編集部)
参考文献:「阪急ブレーブス黄金の歴史」(2011 ベースボールマガジン社)


 



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