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年間に1万5000件も発生! 相続ならぬ争族トラブル回避のための5つの生前対策

2020/11/7 

家族が亡くなり、誰もが願う円満相続。ところが、家庭裁判所では、新規に年間15000件前後の遺産分割争いが起きています。ただでさえ、悲しみに暮れる中で親族間での骨肉の争いは避けたいもの。
 そこで今からでもできる相続ならぬ争族が起きないための対策を探っていきましょう。

争族回避策その1:相続の方針を伝え、家族で予め話し合う

 相続トラブルでよくある光景が意見の不一致。「実家を売るなんてとんでもない」。「親の世話をしていたのに、こんな金額?」などなど、トラブルケースがキリがないでしょう。
 被相続人の遺言もなく、相続人同士で事前の合意もなければ、争いが起きるのも当然です。元気なうちに遺産分割について話し合い、相続人たちが納得できる分割方法を模索することが理想的です。
 被相続人が考える「相続の方針」を予め伝えておくだけでも、トラブルの発生率はぐっと下がるでしょう。

争族回避策その2:「財産目録」を作成し、相続財産を明らかにする

 財産内容がはっきりしないこともトラブルの原因です。遺産がどのくらいあるのかが明らかでないと、被相続人の死後、相続人が遺産調査をしたところ、「以前、聞いていた遺産がなくなっている」「誰かが遺産を持ち逃げした」などとというあらぬ疑いを持つことにもつながりかねません。
 そこで、無用な争いを避けるためにも被相続人は相続財産を一覧表にした「財産目録」を作成しておくべきでしょう。

 目録には不動産や預金、有価証券や保険といった財産を項目ごとに分かりやすく記載していくと良いでしょう。
 ポイントは、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産すなわち、借入金や借金などのマイナス財産も含まれます。相続人は相続放棄や限定承認の可能性も考えなければなりませんので、財産の全体像が分かるようにしておくことがポイントでしょう。

争族回避策その3:相続人を隠さない。「隠し子」も明らかに

 「隠し子」の存在はもはや爆弾そのもの。隠し子を名乗る者が相続発生後に唐突に現れれば、残された家族は衝撃と共に大混乱に陥るでしょう。存在自体もそうですが、隠し子の存在は相続分にも影響を与えます。
 自分の相続分を減らして遺産を分け与えるとなれば、トラブル発生は必至です。
 2013年の法改正で非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同等となっています。嫡出子の猛反発は必至である以上、家族に打ち明けていない子供がいる場合には生前に伝えておきましょう。
 とはいえ、それが難しい場合にはせめて遺言書で明記することで混乱を最小限に抑えるようにしましょう。

争族回避策その4:納税資金となる「現金」が残るように考慮しましょう

 不動産など、現金ではない資産を多く所有されている方は「相続税の納税資金」です。なぜなら相続税は現金での一括払いが原則だからです。相続税は財産が増えれば増えるほど、税額が高くなりますが財産が不動産など、すぐには現金化できないものですと、多額の納税費用を現金で用意できない事態に陥ることも考えられます。
 そうしますと、せっかく残した不動産が納税資金の穴埋めのために売り払われてしまうということにもなりかねません。
 加えて、相続税の申告及び納税は相続人が被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に済ませる必要があり、その短期間に不動産が希望価格で売買できるとは限りません。特に不動産登記簿に「相続」と書かれた物件が売却に出ると足元を見られがちです。

 申告も納税も間に合わないとなれば、「配偶者の税額軽減の特例」や「小規模宅地の評価減」といった貴重な節税策も適用できなくなります。こうした事態を防ぐ為にも一部財産の現金化や生前贈与、生命保険の解約、死亡退職金など、納税資金作りを併せて進めておきましょう。

争族回避策その5:特別寄与者の確認と配慮を忘れない

 2019年7月の改正相続法で相続人以外の功労者の保護を目的とした「特別寄与者」制度という出来ました。特別寄与者とは、被相続人に対し、無償で療養や看護をしてきたことにより、相続人の財産の維持または増加に貢献をした人です。被相続人の親族であることが必要ですが、必ずしも相続人である必要はありません(潮見佳男『詳解 相続法』352頁)。

 ちょっとわかりにくいので具体例で説明しましょう。例えば、夫を亡くした妻が夫の父親(義理の父親)を長年、介護してきたとします。これまでは相続になっても夫がすでに亡くなっているのでこの義父からは1円も貰えないことになります。
 そこで改正相続法はこの様な寄与をした方も特別の寄与をした親族として特別寄与者として定義。相続人に寄与に応じた金銭を請求できることにしたのです。

 とはいえ、相続人からすると、いきなり寄与者から請求を受けるとしこりが残るもの。特に核家族が進み、「そんなことは知らなかった」ということも起こりえます。しかし一方で遺族が日々、お世話になった方がいたのも事実。あまり感情的な対立も避けたいところ。
 特別寄与者がいらっしゃる場合にはあらかじめ、寄与料を決め、用意し、その事実を相続人に伝えておくことが肝要です。相続人と合意の上で気持ちよく感謝の気持ちを伝えるようにしたいところです。

まとめ

 相続トラブル対策は何より「相続発生前」に始めることが重要です。兄弟間・親子間でのコミュニケーション不足がもっともトラブルの基です。相続については予め話し合い、全員の合意を得たうえで遺言書を作成しておくことが一番の対応策と言えるでしょう。

(文責:定年生活編集部)
参考文献:本文中に引用のもの