学問・研究の自由は絶対的に無制約なものか? 遺伝子操作と学問の研究との調和・序論
2020/11/25真理の研究・発見を目的として、新しい認識を追及して行われる「研究」は、学問活動の基本であり、中核である。従って、ときの政府の政策に適合しないからといて前回、ご紹介したような天皇機関説事件のような学問研究への干渉は絶対に許されないといえる。
では政府による学問への介入が許されないとしても、学問・研究の自由は絶対的に無制約であるといえるのだろうか?こうした問題意識は特に人クローンの問題を契機として活発に議論されるようになった。
遺伝子技術と研究の自由の調和
一般に、研究の活動の自由とは、真理の探究・発見を目的として思索を重ね、資料を分析、検討するという内面的活動に加えて、それと相伴って、各種の実験などを行うことで、研究が遂行されるという側面も有する。
特に科学技術の目覚ましい発展によって今までの様に、研究の自由を同質のものと捉えてよいのか?こうした問題意識が人クローンの研究・開発を契機として議論が活発になった。なぜならそうした研究活動が例えば、環境破壊・環境汚染を招いたり、電子工業や情報技術研究の発展によるプライヴァシーの侵害、遺伝子(DNA)の組み換え実験や体外受精、臓器移植等による生命・健康に対する危害など、人間の生存そのものを驚かし、人間の尊厳を根底から揺るがすような重大な側面が生じる可能性がある。
もしそうであるとすれば、こうした研究全てを内心の自由と同視し、絶対的に自由だとは言えなくなる恐れがある。むろん、研究者の自主的な判断により、危害の防止を図ることが出来る。しかしそれは先端科学技術の研究がもたらす重大な脅威や危険を除去することが困難なケースもあろう。逆に研究者に丸投げすることで、委縮効果を生むことがあってはならない。それが現実であれば、研究の自由と対立する人権規定や重要な法的利益(プライヴァシーの権利や人間の尊厳規定)を保護するのに必要最小限度の規制を貸すことが許される例外的な場合もありうるという理解が広まってきたのである。
生体実験の禁止や遺伝子組み換え実験の禁止などがその代表例と言われている。人クローンについては規制法が制定されている
平成9年にクローン羊「ドリー」の誕生を受けて、平成12年にわが国では、正式名称「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」というクリーン技術を規制する法律が制定された。
この法律では、ヒト胚分割胚,ヒト胚核移植胚,ヒトクローン胚,ヒト集合胚,ヒト動物交雑胚,ヒト性融合胚,ヒト性集合胚,動物性融合胚または動物性集合胚 (以上を「特定胚」と定義) など胚の性質ごとに取り扱いを細かく定めた。
また、クローン技術等による胚の作成,譲受と輸入を規制し,ことにクローン技術のうちヒトクローン胚,ヒト動物交雑胚,ヒト性融合胚またはヒト性集合胚のヒトまたは動物の胎内への移植を禁じている。クローン技術については、上記のような立法的解決が図られた。
もう一つの大きな問題は遺伝子組み換え食品をめぐる議論である。(文責:定年生活編集部)
参考文献:芦部信喜『憲法学Ⅲ 人権各論1(増補版」(2000 有斐閣)
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