京都市が「財政破綻の危機」…なぜ? 革新勢力が強い自治体特有の「その理由」
2021/6/16日本が世界に誇る国際観光都市・京都。古都の雅なイメージがありますが、7日、市長から衝撃の発表が…
【京都市・門川大作市長】
「このままでは10年以内に京都市の財政は破綻しかねない」京都市は将来の借金返済のために積み立てている基金を取り崩す「禁じ手」を長年続けていて、このままでは数年後に底を付き、財政破綻する恐れがあるというのです。京都市によると財政破綻した場合、国民健康保険料は一人当たり年間、およそ2万7000円増加。保育料は児童一人あたり、月約9000円増加など市民の負担が大幅に増えると見込まれています。
ところで京都の財政はそんなにピンチなのでしょうか?民間でいうバランスシートに例えると以下の通りです。
京都府の資産2.9兆に対し、負債は2.7兆円。
最近まで少しピンチだった大阪府は資産が7.9兆円で、負債が6.3兆円ですのでやはり京都の財政はあまり余裕がないことが分かります。
しかも上記の数字は「府」であって「市」ではありません。京都市はかなり余裕がない可能性が高いですね。なぜそうなったのでしょうか?そこには京都市特有の幾つかの事情があるようです。
財政難の理由その1:「学生と神社仏閣が多く税収が少ない」
京都市は学生の街としても非常に有名です。京都大学、京都女子大学、同志社大学に、佛教大学等など、大学が非常に多い街として知られています。そんな京都市の学生数は14万人程度。京都は140万人程度の人口ですので、人口の10人に1人が学生という学生比率の高さです。
当然、学生は税の支払をするケースは少ないことに加え、京都市は日本有数の観光地です。観光地と言えば、神社仏閣や木造建築が多いため、固定資産税がRC造のマンションと等と比較すると少ない事情を抱えています。
財政難の理由その2:「税収が厳しい中、手厚い行政サービス」
財政難の理由その2が手厚い行政サービスです。70歳以上の市民に対し、月額250円という少ない負担で市バスや地下鉄が乗り放題になる乗車証を配るなど、独自の手厚い行政サービスを長年行ってきました。
この様な行政サービスを行ってきた背景には京都独特の政治事情があるようです。それは京都府で長年、府政を担ってきた共産党が京都市政にも大きな影響を与えているようです。京都府では蜷川虎三氏が1950年(昭和25年)、社会党の推薦で京都府知事選挙に立候補し当選、以後7期28年間知事を務めました。その後、1960年後半になると蜷川知事と共産党の距離が縮まり、1974年の知事選挙では共産との単独推薦で当選を果たしました。
一方で、京都市は長年、自民党の牙城でしたが、契機は富井清市長の誕生です。1967年に当時の井上市長市長就任僅か1年で死去すると、1967年2月の京都市長選に、日本社会党・日本共産党の推薦で当選。
市長在任中は心身障害者扶養共済事業条例(市単独事業)施行や全国初のろうあセンター(現・京都市聴覚言語障害センター)開設に踏み切るなど、福祉を重視した政策を展開します。
この路線は、1971年に当選した後任の舩橋求己市長にも引き継がれます。のみならず、船橋市政は1975年から共産党に加え、自民党も相乗りにになる自共共闘が実現。1981年に誕生した今川市政では、自民・社会・公明に加えて、共産・民社・社民連の支援を受けます(新自由クラブのみが野党でした)。こうした国政ではありえない自民党と共産党の連携は手厚い行政サービスに繋がっているちと言っても過言ではないでしょう。
財政難の理由その3:地下鉄建設に巨額の費用
、京都市の財政を圧迫しているのが、地下鉄東西線の存在です。東西線は、京都府宇治市の六地蔵駅から京都市右京区の太秦天神川駅までを結ぶ京都市営地下鉄で6483億円の建設費用をかけて、1997年に開業しました。
もともとは、京都市東部地域(山科区・伏見区東部)と都心部をつなぐための交通機関として構想されました。当初は、京都市と京阪電気鉄道で第三セクター会社を設立し、そこが第三種鉄道事業者の免許を取得した上で、京都市が第二種鉄道事業者の免許を取得してその区間の列車運行を行うことに決まりましたた。こうしてできたのが京都高速鉄道株式会社でしたが、経営難から2009年に解散。2009年4月1日から市営地下鉄となったのですが、
全長17.5 kmの東西線の建設費用が、6483億円に上ったのは、京都の市街地の多くの地下には埋蔵文化財が存在するため、その場所に開削工法による地下鉄工事を行う際には、文化財保護法によって事前の発掘調査が義務づけられており、それにかかわる経費と期間を予定しておく必要があったからと言われています。ちなみに21キロを超える東京メトロの地下鉄・南北線が建設費用は総額5,604億円であったことからも京都市営地下鉄・東西線の費用が掛かっていることがお分かりいただけるかと思います。
「(計画を)達成できないことは、数年後に京都市が財政破綻することを意味します」(京都市・門川市長)
発表された行財政改革計画案では、職員の削減や給与カットを実施するほか、軽減してきた保育料を改定する方針が示されました。
こうした財政改革がどこまでできるか?大阪もかつて革新自治体の時代の負の遺産で財政破綻寸前まで行ったことがありました。今後の京都市の改革の行方が注目されます。
(文責:定年生活編集部)
参考文献:本文に引用のもの
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