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司法試験に合格した弁護士でも業務が出来ない土地家屋調査士という仕事

2022/12/16 

「士業」ときくとどんなイメージを持たれるでしょうか?士業とは、弁護士や司法書士のように「〜士」という名前を用いる職業の俗称です。日本には法律関係の士業として8つの士業があるとされています。以下がその士業と言われています。

・行政書士
・社会保険労務士
・司法書士
・弁護士
・弁理士
・土地家屋調査士
・海事代理士
・税理士

 なんだ。宅地建物取引士は「士」業なのに、含まれないのか?と思われる方もいらっしゃると思います。宅地建物取引士は2014年までは宅地建物取引主任者と呼ばれ、2015年から士という名称がつく様になりました。

 今後、9士業と呼ばれる時代が来るかも知れませんが、今回はコラムの内容に直接、関連しないので8士業としたいと思います。
 今回はこの8士業のうち、弁護士に登録してもすぐには開業できない意外な士業についてそのカラクリをご紹介したいと思います。
 

弁護士に登録すると他の士業にもなれる

「士業」と聞くとまずは「弁護士」を思い浮かべる方が多いでしょう。

弁護士とは言わずもがな、司法試験に合格し、司法修習所での研修を受け、最終試験を合格した方に授与される資格です。司法試験自体は法科大学院制度が導入され、また法科大学院に通えない方に対する予備試験ルートもありますが受験者のレベルも高い難関試験です。

 さて、司法試験に合格し、司法修習所を修了すると、裁判官、検察官、弁護士のいずれかになることが出来ますが、弁護士登録すると他の士業になることが出来ます。
 どういうことでしょうか?
 弁護士法3条に答えが書いてあります。

(弁護士の職務)
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

 第3条第2項から弁護士は弁理士、税理士の業務を行うことが出来るとされているので、この2つの業務は登録することが出来ます。
 次に行政書士の業務である行政庁に対する不服申立事件に関する行為が出来るので、登録することなく、行政書士業務も出来ることになります。

弁護士は司法書士業務も行える

 次に司法書士業務に関してはどうなのでしょうか?

 司法書士試験に合格し、その後、認定司法書士になると、140万円以下の民事事件について相談・交渉・簡易裁判所での訴訟代理を行うことが認められています。
 認定司法書士は、少額訴訟が増えて弁護士では手を追えなくなった理由から2003年にできた制度で、唯一他資格者で弁護士抜きで、弁護士の業務領域に踏み入れることができる資格です。当然ですが弁護士でも業務が出来る範囲になります。

  一方、司法書士は本来、登記手続きを独占業務として行っていました。が、弁護士は,弁護士法3条に基づき,登記申請代理業務を行うことができるのではないかとして、司法書士会と紛争が起きました。いわゆる縄張り争いですね。

 東京高等裁判所の平成7年の埼玉司法書士会職域訴訟にて、弁護士でも登記手続きを認められるようになりました。
 ただし、弁護士資格だけでは司法書士としての登録を受けることはできず、あくまでも弁護士の業務による延長で行う登記を認められるルールです。その後、実務としても弁護士が『登記サービス』を大々的に売り出すということもあまり聞かないのですが、当時の業界では話題になった事件でした。

社会保険労務士も弁護士との境界がある

 社会保険労務士にも特定社会保険労務士という資格があります。
 特定社会保険労務士とは、経営者と労働者が争いになった際に、次のADR(裁判外紛争解決)における代理人として、裁判によらない円満解決を実現することのできる社会保険労務士のことを指します。
 紛争解決手続代理業務の主な内容としては以下の通りです。

・個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理
  (紛争価額が60万円を超える事件は弁護士の共同受任が必要)
・個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせんの手続の代理
・男女雇用機会均等法及びパートタイム労働法に基づき都道府県労働局が行う調停の手続の代理
・個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせんの手続の代理

 紛争価格が60万円以上の場合には、受任は出来ないですし、弁護士でも受任が出来る内容です。

土地家屋調査士業務は弁護士でも手が出せない

 ここからが本題です。
 それでは残る土地家屋調査士はどうでしょうか?

 土地家屋調査士の業務は、不動産登記簿に記載の不動産に関する物理的な情報を登記に正確に反映させるために測量業務をする必要があります。
 測量業務というのは、単に法律事務に留まらない業務範囲になるので、幾らお同じ法務省の管轄である司法試験を受けて合格しても改めて資格を取得しなおしてくださいという位置づけになるのです。

 このあたり、司法試験に合格しても例えば、監査業務を行う公認会計士に当然になれるわけではないと考えればお分かりいただけると思います。
 そのため、弁護士資格を有していても土地家屋調査士の業務も出来ず、また登録も出来ないという稀有な業種になります。

土地家屋調査士は人手が足りず、また弁護士とも競合しない

土地家屋調査士会発行の「日本全国あなたの近くの土地家屋調査士」の2019年4月1日現在の会員構成です。

20代54人0.3%
30代1011人6.3%
40代3852人23.4%
50代3351人20.3%
60代4662人28.3%
70代2938人17.8%
80代625人3.8%

 
 この様にしてみるとトータルで16,493人です。
 弁護士が4万人以上ですからその人数が少ないことが分かります。
 さらに弁護士や司法書士が当然に仕事を掛け持ちすることが出来ないというのが土地家屋調査士の魅力です。

 この様に土地家屋調査士試験は、測量業務があるため、同じ法務省が実施する司法試験に合格してもその業務にたずさわrことができません。
 試験の詳細などは、近年、多くの合格者を輩出するアガルートの以下のページでもご覧頂くことが出来ます。

アガルートアカデミー

 土地家屋調査士試験は例年、10月に行われますが、午前試験と午後試験の2部に分かれています。
 このうち、午前試験は一級建築士、二級建築士、測量士、測量士補の方は受験が免除になっています。
 多くの受験生や合格者は、5月に行われる測量士補の試験に合格してから受験をされています。

 そのため、まだ測量士補に合格されていない方や測量の知識がなく、土地家屋調査士試験受験を考える方はまず、測量穂の試験を受験を先行させてください。
 資格予備校に通う場合、土地家屋調査士試験の実績だけではなく、測量士補の受験も併せて行ってくれる予備校を選ぶことをおススメします。

 ご紹介するアガルートの中山講師は測量士補試験に関する著書も多く独学で土地家屋調査士試験全国総合1位合格の同試験を知り尽くした講師です。
 ぜひ、土地家屋調査士試験に短期で合格されたい方、まずは測量士補試験からトライしたい方はチェックしてみてください。

アガルートアカデミー

文責:定年生活事務局



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