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憲法について考える その1~自主憲法論ってナニ?

2019/5/3 

 毎年、5月3日は「憲法記念日」です。1947年5月3日に、日本国憲法が、施行されたことを記念し、国民の祝日となっています。
 2012年に再登板した安倍晋三首相の悲願は「憲法改正」であり、2020年には新絹布を施行したいという発言をしたこともあります。

 日本国憲法は厳格な改正手続きを要するとされ、衆議院と参議院で3分の2以上の賛成をもって憲法改正を発議し、国民投票の過半数の賛成があれば憲法を改正できる仕組みになっています(憲法96条)。
 安倍首相が総裁(党首)を務める自由民主党はその党是が「自主憲法の制定」と言われています。
 一方で、同じ連立与党の公明党は「加憲」という立場を取っています。この自主憲法の制定とはそもそもどの様な含意を意味するのでしょうか?これは日本国憲法の制定海底から立ち戻る必要があるのです。

日本国憲法制定の特色
 日本国憲法の制定においては、直接的には、第2次世界大戦において日本がイギリス、アメリカ、ソ連、フランス、中国の連合国に対し、無条件降伏をしたことに起因します。そして、連合国の占領下において、特にアメリカGHQの強い指導の下に、外国製の原案を基に憲法の起案がなされたという点は世界史においても極めて異例な点が挙げられます。こういした憲法制定過程そのものが憲法改正問題と相まって日本政治の大きな争点となっているのです。

自主憲法論とは?
 1955年(昭和30年)、左右に分かれていた社会党が統一されて、日本社会党が誕生しますが、保守陣営も吉田茂氏の流れをくむ穏健保守と言われる「自由党」と鳩山一郎氏を中心とする「民主党」が合流し、「自由民主党」が誕生します。
 それをバックに第3次鳩山内閣が誕生しますが、1952年の日本独立以降も、自由・民主両党は、憲法の全面改定を検討していました。
 その背景として、「日本国憲法は、敗戦直後の混乱の中で、日本国民に政治的自由がなかった占領下に制定されたものであるから、独立後の国民の自由な意思によって再検討の上、これを我が国の国情にも、また世界の進展にも適合するよう改正することは、民主国家として当然である」という論理が前面に出されます。
 これをいわゆる「自主憲法論」といい、自由民主党の立党時の理念であり、党是の一つとされるようになります。

自主憲法論をめぐる様々な論争
 当然、こうした自主憲法論は、その後、政治的色彩の濃い論争を巻き起こします。まず自憲法制定過程に瑕疵があるのだかから現憲法は無効であるという考えが成り立ちます。これは自主憲法を策定するための土台を大日本帝国憲法によるのか、日本国憲法によるのかという違いとなって現れます。前者はいわゆる憲法無効論や憲法破棄論と親和的となります。

 次に憲法改正を日本国憲法によるべきとしてもその限界はあるのか、ないのかという問題が起きます。いわゆる憲法改正無限界説の登場です。
 現在の日本国憲法では「平和主義・国民主権・基本的人権の尊重」という3大原則があります。これを超えた改正をも可能とするのが、憲法改正無限界説になります。たとえば、日平和主義を削除する様な改正や基本的人権を一部制限するような改正案であれば、この立場に親和的であるといえるでしょう。
 一方で、憲法改正には一定の限界があるとする立場をとる場合、憲法改正は「平和主義・国民主権・基本的人権の尊重」という憲法の3大原則の枠内でのみ改正することが可能となり、上述の公明党の「加憲」論と親和的になります。

憲法改正に限界があるとする意見には大きなアキレス腱も・・・
 こうした憲法改正限界説は一つの大きな矛盾を抱えています。それは大日本帝国憲法から日本国憲法に変わる際には、憲法の原則を大きく変える改正があったのに、なぜ今度はそれが許されないのか?という問題です。
 日本国憲法は形式上、大日本帝国憲法73条によって憲法を改正する形で施行・公布されています。が、大日本帝国憲法は天皇主権の憲法であり、それが改正によって「国民主権」となることには法的な連続性が説明できず、許されないのではないか。その許されない改正によって成立した憲法の原則にはこだわる必要はないのではないか?という批判が起きます。
 これに対し、現憲法は大日本帝国憲法の改正によって成立したと主張した見解では、たしかに法的な連続性は認められないが、1945年8月のポツダム宣言の受諾により、「革命」が起きたとする8月革命説を主張するようになります。

 いかがでしたでしょうか?同じ憲法改正でもそもそも憲法の制定過程やその限界をめぐって実は多くの見解が対立しているのです。衆参両院3分の2以上を改憲派が占めているという事実はあまり重要ではないのかもしれません。

(文責:定年生活事務局)
参考文献:芦部信喜『憲法学Ⅰ 憲法総論』(1992 有斐閣)



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