定年生活.com トップ» 学ぶ » 憲法9条による自衛力・自衛権の限界はどこまでか?

憲法9条による自衛力・自衛権の限界はどこまでか?

2020/4/18 

 前回は日本国憲法で許容される自衛権について検討した。自衛権を根拠に、最小限度の防衛力の保持が憲法上可能だとしても、その戦力解釈にいくつかの論点がある。

自衛力には限界があるのか?

 自衛力の限界はあるのか?自衛のための必要最小限度という基準もあいまいである。政府は繰り返し、長距離爆撃砲、攻撃型空母、ICBMなどは保持できないとしている(1970年 防衛白書)。
 これは他国へ侵略的な脅威を与えるような兵器は保持できないという立場である。それでは核兵器はどうか?

個々の兵器で判断しないという・・・

 政府は自衛のための必要最小限の兵器に当たるかどうかは個々の兵器を個別的に捉えて判断するべきではなく、その装備や編成全体をとらえて判断すべきであるとする。そして核兵器についてもこのような考え方によるべきであるから「核兵器とつけばことごとくいかぬという解釈は出来ない」(昭和31年5月7日 参議院内閣委員会 岸首相答弁)とする立場である。

 しかし、我が国は同時に非核三原則(核をもたず、作らず、持ち込ませず)という政策を採用しているので、結果といsて核兵器は所有しないという立場になっている。裏を返すと非核三原則を見直すと核兵器の朱雄も現行憲法の範囲内になるという解釈も成り立ちそうである。

次に問題となるのが自衛権の範囲

これは古くから2つの場面で問題となった。一つは敵基地の攻撃である。政府は、自衛権行使の地域的限界はわが国の領域に限られず、自衛権行使に必要な限度内での公海、公空に及ぶことができるとする(昭和39年3月9日 参議院予算委員会 林法制局長官答弁)。
 一方で、鳩山一郎内閣以来、外国からの急迫不正の侵害により我が国の滅亡の危機にある場合において他に方法がないときは外国領土である敵基地攻撃をするとことは法理的に自衛の範囲に含まれるとしている。

 ただし、いわゆる他国の攻撃なく行う先制攻撃がこれに含まれるかどうか判然としないといえる。

海外派遣はもっと問題とされた

 自衛隊の海外派遣は大きな論争であった。政府は昭和時代、自衛隊の主たる任務が侵略に対し、「我が国を防衛すること」(自衛隊法3条)に限定されていることを根拠として、海外派兵は自衛の限度を超え、憲法9条1項の精神に反し憲法上禁じられているという立場を一環として取っていた。

 海外派兵とは、「武装した部隊を武力行使の目的をもって外国の領土、領空、領海に派遣すること」を言い、それは憲法9条の解釈上、自衛のための必要最小限の行動を超えるというのがその理由である。

 しかし、時代は平成になり、中東湾岸危機および湾岸戦争を契機として、人員による国際協力の必要性が強調され、武力行使を伴わない国連平和維持活動への自衛隊の部隊参加を認める法律制定の動きが活発化した。当時の野党のうち、社会党と社会民主連合は強硬に反対したが、公明党と民社党が賛成に回り、いわゆるPKO法は成立した。


(PKO法成立を伝えるニュース映像。サンプル版なので、画像は少し悪いです)

こうしたPKO法について武力行使を目的としない限り、自衛隊が部隊として参加するものであっても憲法に反しないという学説もあるが、憲法9条の改正が必要という学説が強い(芦部信喜『憲法学Ⅰ 憲法総論281頁)。

 その後、安全保障環境の変化も相まってこのPKO法制定以上の論争を呼ぶ出来事が起きる。
 それは従前、出来ないとされた集団的自衛権の行使を行うための法解釈と法制定が行われたのである。

(文責:定年生活編集部)
参考文献:本文中に引用のもの


 



定年生活ではLINEのお友達を募集しています☆以下のQRコードからお友達登録をしていただきますと、LINEだけでのお役立ち情報をお届けします。
定年生活ではLINEのお友達を募集しています