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従来できないといわれてきた集団的自衛権行使が可能となった法的根拠となった砂川判決とは?

2020/7/10 

従来は自衛隊はその活動が国内に限定されていたが、国際情勢の変化に伴って、PKO活動、そしてイラク戦争への協力など、自衛隊の活動範囲は徐々に広がって行った。そして2012年に安倍晋三首相が再登板すると、日米同盟の強化が必要であると同時に従来できないとされていた集団的自衛権の限定的な行使の可否について検討をを始めた。
 そして内閣法制局長官を集団的自衛権の行使に前向きな小松一郎氏が就任するに至り、従来の政府解釈は、1972年(昭和47年)の政府見解は結論としては「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」とした見解の変更を行うに至った。

 安倍晋三首相は2015年6月26日、安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会で自衛権が「国家固有の権能」だとした1959年の砂川事件の最高裁判決が、集団的自衛権の行使を容認する根拠になると明言した。

憲法9条がある限り、出来ないと言われてきた集団的自衛権

 従来、憲法9条がある限り、集団的自衛権は行使できないとされてきた。その矢先、2014年頃に、講演した高村副総裁は、今の憲法の下でも必要最小限度の範囲に限定すれば集団的自衛権の行使は容認されるという認識を示した。
 高村副総裁は、さらに最高裁判所は、個別的自衛権と集団的自衛権を区別せずに、自衛権について『平和と安全、国の存立を守るための措置は当然取りうる』と言っている。必要最小限度のものは認められるのに、『集団的自衛権は認められない』といった内閣法制局の論理には飛躍がある」と述べ、今の憲法の下でも必要最小限度の範囲に限定すれば、集団的自衛権の行使は容認されるという認識を示した。
 ここで言う最高裁判決が「砂川事件」である。

砂川事件とは?

 高村副総裁が根拠とした砂川事件について簡単に紹介しよう。
 砂川事件とは、東京都北多摩郡砂川町(現・立川市)付近にあった在日米軍立川飛行場の拡張を巡る闘争(砂川闘争)における一連の訴訟である。
 この判決では、9条1項においては「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することを宣言し、また「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定し、さらに同条2項においては、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定した。かくのごとく、同条は、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。
 と判示している。

 少しかみ砕くと、この判決は、駐留米軍に関する事案であったこともあり、日本独自の自衛力の保持について憲法上許容されているか否かは明らかにしていない。 判決文には”9条2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として”と述べており、個別的自衛権行使の為の戦力保持が合憲か否かについても判断を避けている。 つまり、自衛権そのものは認めているが、自衛権行使の為に自衛隊を保持することが合憲とは言っていないし、自衛権について個別的自衛権と集団的自衛権も区別した議論はしていない。

 そこで「自衛権」の存在を明確に認めたのがこの砂川判決であり、上記の論理の流れから集団的自衛権の限定的な行使の根拠となったのである。

自衛の措置としての武力の行使の新三要件

 2014年7月1日、国家安全保障会議及び閣議において、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を決定した.即ち、現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至ったのである。

 こうして政府は「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(通称 平和安全法制整備法)と「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(通称 国際平和支援法)の総称、いわゆる平和安全法制を制定することにした。

 自衛隊が集団的自衛権を行使するには以下の要件を3つ満たす必要がある。

要件1:我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
要件2:これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
要件3:必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

 この結果、憲法9条の条文解釈から集団的自衛権の一部が行使できるようになったのである。ただし、これ以上の拡張には憲法改正が必要であるということを安倍首相自身も認めるに至った。

(文責:定年生活編集部)



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