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認知症の家族が入院した時、身体拘束にどう向き合う?

2016/1/5 

認知症患者を介護する時、避けて通れない問題の一つに「拘束」があります。

紐やベルトで急に立ち上がれないようにするのは、もとより禁止されています。
車椅子に座らせて、スタッフの詰所に居させるのも、本人の意思に反していれば、「拘束」に当たります。

しかし、「拘束」を実質的にゼロにするのは、きわめて難しいのが現状です。

【入院の際に同意書が要求される】

認知症の症状が進行すると、諸々の判断能力が低下します。
安全確認も不十分になります。

また、認知症の症状としても、姿勢を保持する能力が低下していきます。
自宅で生活している人も、老人ホームや福祉施設に入居している人も、認知症の中期を過ぎた頃には転倒の危険性が高まります。

転倒は、骨折のリスクを高めます。転倒がきっかけで、車椅子生活を余儀なくされる認知症患者は少なくありません。
骨折して入院した時、入院手続きの際に家族に要求されるのが、身体拘束への同意書です。患者の安全を確保するという理由からです。

その同意書を提出するのが、入院生活の前提になります。

【受け入れ先も苦悩している】

認知症患者は、環境の変化に弱くなっています。

それまでの生活環境と変わると、激しく混乱します。
ことに周囲が暗くなる夜に混乱が激しくなるようです。

施設でも病院でも、常駐スタッフが少なくなる時間帯に問題が生じやすくなるのです。

認知症患者は、自分から危険なことはしません。
ただし、安全かどうかの判断ができないため、結果として危険な行為に及ぶことがあります。

普段床に布団を敷いて寝ていた人が病院のベッドで寝ることになったら、通常はベッドだから段差があると認識して起き上がりに注意をします。

しかし、その注意ができないのが認知症患者です。

ベッドから転落すれば、場合によっては大きな事故になります。
体を動かすとセンサーが働くマットレスも最近では使われるようになりました。
認知症患者を受け入れる施設や病院では、そのようなマットレスをベッドの下に置くことも多いようです。

そのようなマットレスを使うに当たって同意書を求める病院は、少なくありません。

しかし、そのような対応をしていても、事故が起こることがあります。
訴訟に発展しかねない事柄だけに、認知症患者を受け入れるに当たっては、病院側はナーバスになります。

動き回る危険性が高い患者については、ベルトの使用も視野に入れた対応をしても許容するという同意書を家族に要求します。

【理想と現実の狭間で】

本人は、もちろん拘束なぞ望んでいないでしょう。
家族も好ましいこととは思っていません。

それでも同意書を提出するのは、単に入院手続きができないと困るからというだけではありません。
家族も本人が想定外のことで事故を起こすことを心配しているからです。

病気や怪我をきちんと治して欲しい。
そのために入院する病院で、新たな怪我をしないで欲しいと願っているのです。

認知症患者の尊厳と身体的な安全という、どちらも尊重しなくてはならない問題が厳しく対立しやすいのが、入院です。
家族が入院期間中毎晩付き添って添い寝するというのは、事実上無理です。

認知症患者をも含めた現実的な解決方法が見つかっていないのが、身体拘束の問題です。

ことに急に環境が変わり、短期的な問題として処理しなくてはならない入院での身体拘束は、身体拘束はすべきではないという理想と、身体拘束をせざるを得ない現実とが、厳しくせめぎあっています。