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赤ちょうちんの目利きになろう

2012/7/19  赤兵衛 さん

定年後の生活|赤ちょうちん
居酒屋チェーン店の出店が激化している。いまや、繁華街や駅前など全国どこでも見掛けるようになった。
「いらっしゃいませ」。スタッフの笑顔もマニュアルどおりに均一で、メニュー、ドリンク類も画一化されている。店内の造形にしてもしかり。照明が隅々まで行き渡り店内は明るく清潔。プライバシーに配慮したレイアウトは女性のウケもいい。
シニア世代の男性も増えている。客を引き寄せるのは料金がリーズナブルなところだろう。いまや、寿司=回転すしの思考パターンと同様に居酒屋=チェーン店の感覚である。出張先で軽く飲みたいとき、チェーン店ですませるという中高年も多いという。

そのチェーン店の対極にあるのが個人で営む年季のはいった赤ちょうである。軒下にぶらさがっている朱色に黒で書かれた居酒屋という文字。薄汚れ、綻びがあって、やや傾いているが、そこにはなんともいえない趣がある。
灯がはいるとそれまで眠っていた店内が俄かに勢いだつ。その景色もいい。さらにいえば暖簾を割って店にはいったときに感じるほんのりとした黴臭さも中高年にとってはどこか懐かしい。
電球の明かりが届かないカウンターの隅や通路の端などにうっすらとした闇が横たわっていて、手垢や煙などで黒ずんだ壁からは店の足跡を垣間見ることができ、名も知らぬ、あまたの客の歓声や吐息が伝わってくることを感じとるのも楽しい。

敷居が低いのも赤ちょうちんである。一見の客でもビールから熱燗になるころには肩の荷をすっかり降ろして場に馴染んでいく。聞こえてくる常連の声などに耳を傾けながら、店主の仕草や振る舞いなどを見ていると、瞼の裏側でいつしかストーリーが動き始めて中編小説を読んでいるような気分になってくる。

そんな赤ちょうちんが次々に暖簾を下ろしているという。チェーン店の進出も要因のひとつになっているが、そればかりではない。店主の高齢化などいろんな事情が背景にあって閉店に追い込まれているのだ。
あるはずの赤ちょうちんがなく、更地になっていて愕然としたこともある。赤ちょうちんを撤退させているのは客の高齢化によるところも大きい。年齢を重ねるにつれ、カウンターでぽつんと飲むだけの気力、体力がなくなり、常連がいつしか疎遠になっていく。悲しいけれどこの流れには逆らえないだろう。赤ちょうちんは文化である。そのよさを若い世代に伝えたい。

現役を引退して赤ちょうちんに魅せられた人もいる。先日、行きつけの店で隣り合わせになった同世代の男性と言葉を交わした。面識のない人である。趣味は赤ちょうちん巡り。知らない居酒屋に一人、ふらりとはいることだという。「ですから、この店も今日が初めてです」。彼は熱燗をちびり、ちびりと口に運んだ。目頭が少し赤らんでいる。「いまじゃ、赤ちょうちんの目利きになりましたよ。どの店にはいればいいか、皮膚感覚で分かってきました」と笑った。
一見の客なのに、知らずしらずのうちにカウンターで常連のように振舞っている姿を思い浮かべた。妙な生きがいをみつけて、自分のスキルとやらを磨くよりも、よっぽど気が利いているような気がするが、どうだろう。

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