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草葉のかげで

2013/4/24  不如帰 さん

定年後の生活|シニア
桜の散るちょうど一年前、祖母が亡くなりました。主人のおばあちゃんです。ここ十年ほどは認知症が進み、ほとんど寝たきり状態でしたが九十四歳、自宅で逝きました。
病気はなく、老衰で静かな旅立ちでした。
葬儀は、それはそれはにぎやかで、孫ひ孫までがやってきて盛大にお別れしました。

ところが、四十九日が終わり新盆前の昨年六月、義父(祖母の長男)と姉妹らのあいだに揉めごとがおこり、以来ばったり親交がなくなりました。
祖母の生前は、あれほど濃い親戚づきあいだったのに、です。

どんないきさつがあって、どんな誤解が生じたのか孫嫁である私はわかりませんが、今年の一周忌は昨年の葬儀・四十九日とはうってかわり、ごく内輪の、わずかな親戚が集まっただけの寂しい法要でした。
仲たがいしていた兄弟が肉親の死をきっかけに再会し、縁を回復する場合もありますが、主人の実家はまったく逆です。

祖母に骨肉の争いになるほどの財産はなく、金銭のもめごとではないのは確かですが、それゆえに感情の行き違いは肉親の一周忌をもっても埋め合わせできないほどの深刻なものなのでしょう。
人が集まるのが好きだった祖母は草葉の陰でどんな気持ちでいるかと思うと残念です。
立派なお墓をたて、お坊さんを呼んで供養しても、死んでも死に切れないでしょう。

先日TVのドラマを見ておりましたら、「生きている人にとって死んだ人が必要になることがあるんだ」という台詞が出てきて、深くうなずきました。
法要は、そう、生きている人が亡くなったひとのためにする行事ではなく、今生きている人たちが亡くなった人を「必要とする」時間だと思うのです。
実の親の一周忌に来なかった義父の姉はよほどの理由があったのでしょうが、こんなときこそ本当に亡くなった祖母を必要としてほしい、と感じます。

法要のあとの会席は、温泉の一室でこじんまりといただきました。散り始めた桜と、黄色のレンギョウ、紫のモクレンの花が美しく、春うららかな日でした。

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