七輪

2011/11/30  光子 さん

定年後の生活|七輪私は、もともと漁港のある海辺の出身ですが、海のない県に嫁いで40年以上になります。

山菜やキノコ、川魚など四季とりどりの食材が豊富で美味しく、それらを採りに山里を歩く生活も楽しいものではありますが、やはり子ども時代によく食べた海の幸が懐かしく思われることもあります。

波の音、かすかな潮の香り。
私は中学を卒業すると、埼玉県にある商業高校の定時制に通いながら、看護師になりました。
十五で離れた故郷ですが、ひなびた漁港の景色は何年経っても忘れることはありません。

先日、今年ボーイスカウトに入団した6年生の孫が、外で料理をするといって七輪と炭を持って遊びに来ました。
孫の自宅マンションのベランダではいかにせん、七輪を使うのは無理なのでしょう。
私たちの家には猫の額ほどですがちいさな庭があるので、その隅でささやかな七輪バーベキューを実行しました。

火おこしは途中までガスでやりましたが、七輪に炭を移し、割り箸と新聞紙を焚きつけに、あとはバタバタとうちわで空気口に風を送り込みます。
その、バタバタといううちわの動作に、今はもういない母と祖父の姿を思い出しました。

父は私が生まれてすぐに他界したので、家計は漁師であった祖父と年の離れた長兄がささえていました。
祖父の、赤銅色の肩と背中が小刻みにゆれ、威勢よくうちわを打つさまは、これから焼き物をする楽しみと期待に満ちていました。

黒い炭がほの赤く熱をおびてまわりの空気を陽炎のようにゆらめかせ、じんわりした暖かさが七輪から発せられます。
焼くものはホタテ、えび、肉、ウィンナ、ピーマン、かぼちゃ、芋など。おむすびをにぎって醤油を塗り、アルミフォイルに包んで焼きおにぎりも作りました。

祖父はよく干物を炙(あぶ)ってくれました。
「炙る」というのは七輪ならでは、の調理法でしょう。
近年では、シニア世帯には安全のため IH 調理器が普及していますが、あれは「炙り」ができません。ガスであればまだ「直火」ですから、多少趣は異なるものの、弱火にすれば何とか「炙り」はできます。
子どもたち(孫の親)が、火の消し忘れを心配してガスをやめてIHにするように勧めるのですが、私にはやはり味気なく感じられ、まだガスを使い続けています。

炭の遠火で炙る・・・すっかり忘れていた贅沢です。

肉を裏返すのももどかしく、せっせと口に運ぶ孫の健康的な食欲。目を細めていた祖父の気持ちがよくわかります。

代が変わった海辺の生家はすっかりきれいに建替えられ、ここ何年も帰っていません。
何十年ぶりの七輪の煙は目にしみました。ツンと目の奥が痛くなったのは、煙のせいだけではありません。

孫が帰った翌日。
主人とホームセンターに行って七輪と炭を買いました。
日常的に使うことはないでしょうけれど、それでも手元に置いておきたい気がするのです。故郷を手繰り寄せるように。

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