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シリーズ 人工透析の話(1)

2011/7/19 

今回から3回シリーズで「人工透析の話」を連載します。

最近マスコミで、臓器売買の事件が報道されていますが、これも人工透析が関係しており、新聞の論調はちょっとニュアンスが異なるようです。

 

やむにやまれず臓器移植に踏み切った病院長

去る6月23日、警視庁組織犯罪対策4課は、東京江戸川区の堀内クリニック院長、堀内利信ら5人を臓器移植法(臓器売買の禁止)違反容疑で逮捕しました。
4課が動いたことはマル暴がらみだったからで、「臓器売買」という怖ろしげな語感から、マスコミは彼を極悪非道人のような扱いで報道しました。

定年後の生活|人工透析透析センター発見

しかし、同じ病気に悩むほとんどの人工透析患者は、この院長に同情的でした。触法行為だけにおおっぴらには言えないけれども、自分だって条件さえ合えば同じことやるという気持ちだったでしょう。偽善的マスコミとは見方が違います。私の身内が同じように透析を続けていますので間違いない。
その同情される理由をいくつか挙げてみます。

この院長氏、年齢が55歳。すでに足かけ6年にわたって人工透析を受けていました。人工透析というのは、腎臓が正常に働かない腎不全の患者が、自分の血液を抜いて浄化してまた血液を戻すことで、体内の毒素をきれいにする治療法。これが1日おきに一週間に3回。一回につき4時間かかります。これがなかなか消耗する。終わるとぐったりして何十分も動けない患者もいます。
その間、ベッドにしばりつけられているわけです。寝返りとか起きあがるとか多少の動きはできますが、ベッドから離れることはできない。55歳といえばまだまだ働き盛りです。病院をもっと大きくしたいという思いもあったのではないか。そこにセミリタイア的に週3回、定期的に病院に通わなければならないのは苛立ち以外の何ものでもなかったでしょう。

そしてこれがいちばんつらいことなのですが、人工透析治療には先行きがないことです。治療は治療なのですが、病気を治すための治療ではなく、現状を維持するためだけの治療だから、いくらやっても治る見込みはない。他に方法がなくて、やらなきゃ死んじゃうからやるしかない、という後ろ向きの治療という点にやるせなさを感じる患者も多いのです。しかも一生。盆暮れ休みなく、続けなければならない。

定年後の生活|人工透析

人工透析患者数の推移

(日本透析医学会調べ)-85年66千人→10年297千人 加速度的に増加しているのがわかります。

逮捕された院長はこの精神的つらさについ禁断の臓器売買に手を染めたのではないか、と思われるのです。
もちろん適法な手段で臓器移植の手続きもしていました。日本臓器移植ネットワークに登録して、ドナーが出てくることを待っていました。しかし、待てども待てどもドナーは現れない。当たり前の話で、登録している腎臓病患者は約29万人。それに対してドナー、脳死患者や臓器提供の意志を表した患者は極端に少ない。成立したのは年間100例、トータルで1200例ほどにすぎないのです。どれほどの患者がこのあまりの率の少なさに移植をあきらめていることか。これは間違いなく法律の責任です。
業を煮やして禁断の臓器売買に手を染めてしまった院長ですが、相手がマル暴だったのが、よくも悪くも破滅の道につながっていたのです。

第一、今回動いたのがやくざ相手の捜査4課だったことも象徴的で、はっきり言ってマル暴がからまなければ摘発されなかった案件なのです。欲張ったやくざへの対応を間違っただけの話なのです。正式なルートでは腎臓移植ができなければ、裏のルートを使うしかない、とすればやくざとの接点を持たざるを得ないという事情もあります。また、人間の腎臓というのは2つあって、腎臓移植はそのうちの一つを移植すれば十分。心臓や肝臓と違って、相手の命を買うという性質のものではないので、臓器売買というおどろおどろしい言葉に対して罪悪感も薄かったと思われます。
もう一度言います。カネと機会があれば誰でも同じことをやる。それくらい人工透析はつらい治療なのです。

人工透析の話(2)を読む

人工透析の話(3)を読む
 

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