シニアが読み解くエネルギー・環境問題（10）原子力に代わる天然ガス？

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シニアが読み解くエネルギー・環境問題（10）原子力に代わる天然ガス？ 2012/5/11

天然ガス

原子力に代わる天然ガス？

原子力発電の運転停止が相次ぎ、「原子力ゼロ」の状況も現実となっています。日本の原子力発電がすべてストップした場合、電力危機がやってくるという不安の声も少なくありません。そんな中、専門家の間には、短期はともかくとして、中長期的には、天然ガスが原子力の代替エネルギーとして注目されるとの見方が広まっています。すでに、アメリカでは、天然ガス革命といわれ、新たな天然ガス資源であるシェールガスの商業化が大きく進んでいる実態が明らかになっています。

原子力発電は従来、日本の電力の３分の１を供給する基幹電源とされ、暮らしや産業を支えるエネルギーとして大きな役割を果たしてきました。その原子力発電が、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、相次ぎ運転停止に追い込まれ、再稼働の見通しが立たない状況となっています。

電力不足が深刻化し、今年夏には大規模な停電が起きるのではないかとの声も聞かれます。確かに、今年夏に限って言えば、原子力に代わる他の電源、石油、石炭、天然ガスなどの火力発電を総動員してこの緊急事態に備えなければなりません。当然、電力需要家である、一般生活者やオフィス、デパート、スーパーなどの業務・流通部門、工場などの産業部門では、節電や供給カットなど、厳しい事態も予想されます。

しかし、もう少し長い目で見た場合、決して悲観する状況ではない、と専門家は見ています。その最大の理由は、天然ガスが世界的に大きくクローズアップされてくるということです。
日本でも、現在、天然ガスが原子力発電と同じくらい重要なエネルギーとして、利用されていますが、天然ガスは石油、石炭と同じ化石燃料であり、全世界の埋蔵量は約60年とされていました。いずれ枯渇するとみられていたのです。
エネルギー｜ガス
ところが、近年になって、アメリカ、カナダで、新しい天然ガス資源の一つといわれるシェールガスが発見され、ここ数年で急速な商業生産が進んだのです。シェールガスは、頁岩といわれる岩層に含まれている天然ガスで、埋蔵量はかなりの規模が見込まれています。現在、アメリカで生産されている天然ガスの16％はこのシェールガスといわれます。

アメリカは従来、天然ガスの大消費国であり、海外から大量に天然ガスを輸入していました。しかし、シェールガスの商業生産が始まって以降、天然ガスの輸入が激減したといわれます。そのため、シェールガスの生産によって、アメリカでは、天然ガス革命が始まったとされているのです。

日本の場合、地層年代が新しいため、シェールガスは期待できませんが、新しい天然ガス資源として、メタンハイドレートが、日本近海に相当量眠っているといわれます。専門家によると、その量は、日本の天然ガス消費量の100年分に相当するとされています。しかも、日本では、採掘技術が進み、早ければ、2012年度中にも、知多半島沖の南海トラフ（お盆状になった海溝）で産出試験が行われる見通しです。メタンハイドレートが商業生産されれば、日本は一躍、エネルギー資源大国となりそうです。